little man note,

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『PIGGY』

『PIGGY』
(カーロータ・マルティネス・ペレーダ監督/2022年/スペイン)

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「ブルータルリベンジホラー」と銘打たれていたが、1人の肥満少女の成長譚という印象。ホラーというと“怖さ”が要になるが、どちらかというとその要素は薄いと感じた。成長過程で危険な目に遭うので、スリラーという表現がしっくりくる。“ブルータル”な要素もそれほどない。

孤独のあまり髪をしゃぶったり自慰に耽っていた肥満少女が、自身のコンプレックスと苦しみを周囲(特に家族)に開示し、成長する。殺人鬼とのラブロマンスのようなシーンがあり、その意外性が面白かった。いっぽう、その彼を結果的に殺してしまうのは少女の自立を示唆しているかもしれない。

また冒頭では肉に対する批判的な視線が目立ったが、終盤では、少女の肉に特別な物語を持たせていないように感じた。「肉はただここにあるものでしかない」と言っているようだ。そこに、“意味”がある。

パンフレットのデザインや紙質がいい。文字資料も多い。ただ監督が「私自身がLGBTQIAである」という表現を2回しており、そこが引っかかる。「私自身がLGBTQIAである」ということは「私はレズビアンでありゲイでありバイセクシュアルでありトランスジェンダーであり、クエスチョニングもしくはクィアでありインターセックスでありアセクシュアルである」ということだからだ。

2回も同じ表現をしているから、多分通訳の問題ではなく、監督自身が口にしているのだろう。「私はLGBTの当事者です」という表現をたびたびSNSで見かけるが、日本特有のものではないのかもしれない。